本日の参議院文教科学委員会で著作権法改正案の審議があり、そのなかで図書館資料の海外へのデジタル送信について答弁があったので、要点をまとめておきます。わたしの理解した範囲でのまとめなので、正確なところは中継映像なり、後日出てくる議事録なりで確認してください。

動画はこちらを参照。

赤:赤池誠章議員(自民)、文:文化庁・矢野次長

(13:45〜)赤:海外在住の研究者等から利用したいとの声があがっている。どう対応していくのか。

(16:53〜)文:海外からの利用の可否については、法律上、図書館資料のメール送信等に関する送信先を国内に限っているわけではない。しかしながら、個々の図書館等がその設置目的等に応じて、送信先の範囲を判断することになるため、各図書館等によって異なってくるものと考える。公立図書館は設置目的からして基本的にその地域の居住者が主な利用者になるものと考える。

(19:30〜)赤:海外に関しては法的にはできるが、具体的にはまだということかと思うが、大きな意義を持つものだと思っている。日本研究はたいへん大事なテーマで学術振興面でも、国際貢献、日本をよく知っていただくうえでもたいへん重要だと思っている。IDパスワード、住所氏名ではなく、研究者が所属する機関で本人確認ができる。経済安全保障の観点からは、すべての国にどうぞとはいかない。価値観が異なる国にはより慎重な対応をお願いしたい。

さ:佐々木さやか議員(公明)、文:文化庁・矢野次長

(1:20:13〜)佐:海外在住者の登録も妨げられないと承知している。海外においてもデータの不正拡散防止を徹底すべきだと思うがどうか。

文:図書館資料のメール送信等については、法律上、送信先を国内に限っているものではない。海外在住者への送信については、海外における不正拡散を実効的に防止しうるか、送信先の国の法律との関係、さまざま検討を踏まえて実施の可否を判断する必要がある。本法案では送信先が国内外にかかわらず、送信するデータについて図書館等が不正拡散防止措置を法律上の要件としている。具体的な措置の内容は今後、幅広く意見を聞きながら検討する。

吉:吉良よし子議員(共産)、文:文化庁・矢野次長

(2:15:12〜)吉:海外の日本研究者、日本資料専門司書ら外国人にも同様のサービスが提供されることを強く望んでいるとの声が届いた。送信サービスは海外にも可能になるということでよいか。

文:図書館資料のメール送信等のサービスの利用に、著作権法上その送信先を国内には限っていないので、法律的には可能。一方で個々の図書館等はその設置目的等に応じて利用者の範囲を判断しているため、図書館等によって利用者の範囲は異なってくるものと考える。公立図書館は設置目的からして基本的にその地域の居住者が主な利用者になると考える。当該地域に居住してきた方が海外赴任先からメール送信を希望することもあるが、そのような個別の場面については、設置目的を踏まえて図書館が判断することになる。

(感想)

法律上、外国を除外していないことを確認できた意義はあった。だが、細部は今後の関係者協議とガイドラインに丸投げに近いので、これからも注目が必要。答弁がメール送信のことばかりで、入手困難資料に言及されなかったのは、こちらの海外送信は当然できるということなのだろうか。不正拡散防止してくれそうな国に送信を限定するかのような答弁があったのは要注意。不正拡散がありそうな国にも日本研究者はいて(というか、日本研究者が最も多いのは、たぶんその国だろう)、資料へのアクセスを望んでいるのになあと思った。

(2021/5/26追記)

本日の参議院本会議で可決・成立しました。

(2021/5/27追記)

一部、日本語がおかしかった箇所を修正しました。