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著作権のパラダイム転換へ

複雑になるだけの著作権は本当に文化のためになっているのか? それはユーザーの権利を阻害していないだろうか? 本書はこうした観点から、権利論とコモンズ論を基軸に人文社会、自然科学の知見を幅広く援用し、そもそも文化とは何かまで根底的に問い直す。ユーザーの人権という視点から、数百年に及ぶ著作権のパラダイム転換を提案する意欲作。

「ひとは影響を受けた作品を身体化し、所有している。作品のユーザーにも人権にもとづく権利があるのではないか。「文化」は集団的なものであり私的所有とは相性が悪いのではないか。そういった考えが本書の底流にある。これは論争を呼ぶアイデアだと思う。」

目次

はじめに
著作権を構想し直す 著作権法の難解さ 転換の必要性 本書の構成

第Ⅰ部 作者とユーザーの人権

第一章 著作権の人権論
現行法のおさらい 公表された作品の公共性 著作権は人権か? JASRACの人権論 「享有」と「専有」 ベルヌ条約の訳文をめぐって 旧著作権法の「専有」

第二章 障害者アートをめぐって
Art Brutとアール・ブリュット アール・ブリュットの歩み 推進法の制定 著作権法の限界とパリ展 障害者アートの著作権 「文化の発展」に向けた可能性

第三章 ユーザーの人権
世界人権宣言から考える 「公正な利用」と「公共の福祉」 「公正な利用」のための「費用」 ユーザーの人格権

第四章 作品が身体化する
脳のしくみを知る 視覚による情動と認識 記憶の種類と身体性 音楽と身体 「身分け」と「言分け」 記号による分節化 連辞と連合 通時態と共時態 ユーザーは作品を所有する

第Ⅱ部 「文化」とは何か

第五章 「文化」概念の変遷
あいまいな「文化」 「文化」と「文明」 cultureの定義 アメリカとドイツでの展開 Kulturの日本への導入 社会学と「文化」 カルチュラル・スタディーズの「文化」 イーグルトンの批判 ユネスコの「文化」

第六章 日本の「文化」概念の現在地
戦後日本の「文化国家」 「文化の時代」 文化庁の設置と「文化」 文化産業の隆盛 文化芸術振興基本法 国土交通省と「文化」 インバウンドと東京五輪のインパクト 文化芸術基本法 文化経済戦略 二〇一七年の転換

第Ⅲ部 文化のコモンズへ

第七章 文化コモンズを考える
「文化」は集団的なもの 文化コモンズを求めて 総有と共有 コモンズの定義と所有制度 所有・管理・用益 文化コモンズの定義と性質 地域団体商標 地理的表示保護制度 脱コモンズ化

第八章 「海賊版」からオープンアクセスへ
「海賊版」・国境・メディア技術 「海賊版」の役割と論理 オープンアクセスとは 運動のルーツ 情報の囲い込み対オープンアクセス 文化コモンズの視点から

第九章 「文化の発展」のために
DIWO文化 コモンズのロマンス 伝統的知識をめぐって フェアカルチャー 志賀直哉の場合 スタジオジブリの決断 「文化の発展」に向けて