ある国際会議での報告のために書いたものをここに載せておきます。

 

日本の図書館のデジタル・ネットワーク対応のための著作権法改正案について

(海外の日本研究者のかたがたに向けて)

1.背景

国立国会図書館(NDL)がデジタル化した資料のうち、著作権が残っているが入手が困難な資料等(約150万点)については、承認を受けた図書館に設置されたPCで読むことができます。「NDLオンライン」で検索した結果に「図書館送信」と表示される資料がそれです。海外においても同様のサービスを受けることができるのですが、厳しい基準があって、現在までに承認を受けた海外図書館は北米の1館、欧州の1館だけです。そのサービスでは利用者が図書館の指定PCで読むことしか認められていないので、司書が検索した画面をSkypeなどでリモートの利用者にみせることができません。

また、NDLだけでなく、すべての図書館は利用者の求めに応じて資料の一部をコピー機で複写して郵送することができるのですが、それをPDF化してデジタル的に送ることは違法です。そのため、海外からILLで複写を取り寄せても、図書館が閉鎖されていると受け取ることができません。

2.検討されていること

文化庁はワーキングチームを作って、図書館のデジタル・ネットワーク対応のための中間報告をまとめました。それによると、NDLの「図書館送信資料」を個人が家庭のPCで閲覧できるようにすること、図書館が資料をデジタル的に複写できるようにすることが盛り込まれています。ただし、海外でも同様のサービスを受けられるようにすべきとの意見は、強く出されてはいません。

3.いまなすべきこと

文化庁は、中間まとめに対するパブリックコメントを2020/12/21(日本時間)まで募集しています。そこに「海外にいる外国人がおなじサービスを受けられるようにしてほしい」と要望しなければなりません。そうでないと、海外からは大きな要望はなかったとされてしまいます。コメントは個人でも団体でも送ることができますが、団体からの意見のほうが重視される傾向があります。また、パブリックコメントとは別に、団体で声明を出すことも有効です。

パブリックコメントの後、具体的な法案づくりに入り、来年1月からはじまる通常国会に著作権法改正法案が提出される見込みです。

4.パブリックコメントへのリンク(中間まとめ報告書もここにあります)

https://bit.ly/346bD0n

5.参考情報

The North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)

からの呼びかけ(H-Netへの投稿):https://bit.ly/34os3kX

 

解説記事(鷹野凌氏のブログ)

https://hon.jp/news/1.0/0/30033

 

追記:パブコメのWEBフォームに海外の電話番号を入れると、電話番号の形式ではないと拒絶されるようです。文化庁に改善の要望を送りました。とりあえず、個人からの意見は電話番号必須ではないので、空欄で出せばよいと思います。