コメントが掲載された東京新聞(2017/5/12朝刊)がようやく手に入った。今回は事前確認がなかったので、コメントのどこが拾われているか気になっていた。新聞コメントの常として、たくさんしゃべったことのほんの一部しか載らないので、電話インタビューで語ったことを補足しておく。

「共謀罪」に著作権法違反が入っているのは、海賊版販売が暴力団の資金源になることを減らしたいという意図だろう。しかし、資金源としては麻薬取引などのほうがはるかに大きいので、効果は限定的。海賊版がテロ集団の資金源になっている可能性は海外で指摘されているが、実例を知らない。あったとしてもそれは大きな資金源ではないと思われる。いずれにしても、現行法にはみなし侵害罪があるので、犯罪集団が海賊版を売って資金を得る前に、販売目的で所持した段階で検挙できる。それをあえて「共謀罪」の対象にもする必要性は薄い。「共謀罪」に問われることを恐れた過度の心配や萎縮が創造の領域にもたらすマイナスの影響のほうが問題ではないか。

政府答弁では、元の罪が親告罪であるものは「共謀罪」でも親告罪のままとされている。したがって「共謀罪」を作ることで著作権侵害が非親告罪化されることはない。明確化のためと将来の一方的な解釈変更を防ぐために、その点を条文に書き込んでおいたほうがよいと考える。

昨年、一部非親告罪化の著作権法改正がされた。それは、TPPの発効と同時に施行されることになっていて、その部分は「共謀罪」でも非親告罪になる。しかしこの非親告罪化部分は、原作をそのまま頒布するケースに限定されているので、二次創作への影響はほとんどない。現時点までの非親告罪化・「共謀罪」の流れをみる限り、コミケへの影響はさほど心配ないと思う。

ただしファンサブは非親告罪の対象になる可能性がありそうだ。違法とはいえファンサブが海外への日本アニメの伝播に一定の役割を担っていることは、研究者らが指摘している。ファンサブへの規制が強くなりうることが、「クールジャパン」なるものに与える影響については議論の余地がある。

いまのところ違法ダウンロードは最高で懲役2年なので「共謀罪」の対象にはなっていないが、将来的に厳罰化されて懲役4年を超えることになれば対象になる可能性がある。その場合、どのようなことが起こりうるかは、考えておくに値することだ。