違法DL拡大法案のまき直し検討が、またしても大急ぎで進められている。11月27日に第1回の検討会があり、年度内(2月はじめ頃まで?)にあと2回開いて結論をまとめるそうだ(第2回は12月18日開催)。既視感のある、スケジュールありきの強引な進め方というべきだろう。

まき直しにあたって、数千人規模のアンケートを実施すると聞いたときから、少しいやな予感がしていたのだが、このたび公表された結果をみると、やはりという印象が否めない。

この調査は、ネット調査会社に事前に登録してあった有報酬の協力者に対して行ったようだ。男女・年齢・地域の層別で有効サンプル数は2,580。

設問(2)侵害コンテンツのダウンロード経験の有無(その1):「違法にアップロードされたことが確実だと知りながら,漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等のコンテンツをダウンロードした経験がありますか」

に「あり」と答えたのは6.2%だった。この6.2%(n=159)に対して、最後の設問で

(9)違法化・刑事罰化による影響:「違法にアップロードされたことが確実だと知りながら,漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等のコンテンツをダウンロードする行為が違法化・刑事罰化された場合,あなたは困りますか

と聞き、これへの回答の集計は、

1.必要性の低いダウンロードは行わず,必要性の高いものは正規に流通しているコンテンツを利用するなどするので,特段の不都合は生じない:44.0%

2.現状よりは不便になる部分があるが,そういったダウンロード行為が法律上禁止されるのであれば,それもやむを得ない(日常生活に支障は生じない):45.3%

3.日常生活に支障が生じる:10.1%

4.その他:0.6%

となっている。これをもって文化庁は、違法化・刑事罰化しても困るひとはほとんどいないといいたいのだろう。

この最後の設問を含め、「漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等」といった、それぞれにユーザー層と文化・社会的な位置づけにズレがあるコンテンツ群を一緒くたにしている。調査対象者の層別化としては不十分だろう。この点は検討会の場で荻野構成員が指摘している。

回答者のなかに、書籍や論文、プログラムをダウンロードした者が含まれているのかどうかもわからない。

さらに設問(9)に用意された選択肢が、複数の異なる事項を恣意的に組み合わせたものになっている。

つまり、「必要性の低いダウンロードを行うのか行わないのか」「正規コンテンツ利用に変えるのか変えないのか」「不都合が生じるのか生じないのか」「日常生活に支障が生じるのか生じないのか」は個別に聞かれるべきことなのに、

「必要性低い→ダウンロードしない、必要性高い→正規コンテンツを利用する、だから不都合はない」

「不便にはなる→やむを得ない→けど日常生活に支障ない」

のストーリーがあらかじめ設定され、他のケースがありうることが封じられている。たとえば、「必要性の低いダウンロードはしないが、正規コンテンツの利用もしない」「日常生活に支障が出るとまでは言えないが、さまざまなコンテンツを知る機会は減る」といった、権利者があまり聞きたくないようなケースである。

さらに「日常生活に支障」などと聞くのはいかがなものか。

そもそも漫画のようなエンタメ系のコンテンツは、それがなければ「日常生活に支障」が出るようなものでもない。誰かが権利者に無許諾でアップされた有益な記事をダウンロードできなくなっても、「日常生活に支障」は出ないことがかなり多いだろう。

違法DL拡大に猛反対が起きたのは、「日常生活に支障」が出るからではなく、コンテンツ利用が過度に萎縮してしまって、「文化の発展」が阻害されかねないからではないのか?

問題の本質がすり替えられている。

このアンケート結果が、これからどう「活用」されるのか、要注目だ。